晩酌 愛酥瓠
     あそこ

渡辺 優子




MESSAGE FROM
"YUKO"

ながらくのご愛顧誠に有難うございました。



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栄のプリンセス大通りを南へ、「むつみ小路」を入ると大きな赤提灯が目印。
「あそこ」とは意味深な名前だが漢字で書くとご覧の通り、「こよなく酒を愛す」と言う意味なのだそうだ。
ある年配の「女将のファン」氏が頭をひねって付けた名前だそうで、生半可な「学」では出てこない傑作なのである。

...が、うっかりすると誤解をしてしまうのでご用心。
「今度の呑み会は”あそこ”だからよろしく」、ところが相手は”いつものあの店だな”と勘違いし、いつまでたっても現れなかったなどと言う「悲劇」が起きてしまうのだ。
この店の魅力は、女将が高山出身の「全くあかぬけないネアカ」であり、店内に溢れるざっくばらんな雰囲気であろうか。
狭い階段を上ると二階には7,8人用の小部屋もあるが、何と言っても肩をこすり合わせながら座る9席のカウンターがお気に入りだ。
始めて顔を合わせた客同士が、たちまちにして愉快な飲み友達に変身してしまうのである。

女将は根っからの人好き、話好き.....それに料理好き。なにしろ子供の頃から台所に立つのが大好きだったというから「納得」だ。
目の前に並ぶ四季折々のオリジナルメニューは「あそこ」ならではと、集まる下戸達に大好評である。
少々荒っぽい会話と手料理の味を楽しみにやってくるナゴチョン族のおじさんたちも結構多いのだ。
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一念発起した女将は故郷(飛騨高山)帰り、平成19年10月末をもって名古屋の「愛酥瓠」は閉店することとなった。