山田新一ゆかりのお店
オステリア タント・タベタリーナ
訪問記
2003.11.14


息子の縁談話で東京に出向いた11月14日の夜、予約しておいたイタリア料理店「オステリア タント・タベタリーナ」に夫婦で出掛けた。 かの佐伯祐三の親友山田新一画伯(1899〜1991)の長男安里氏夫妻が経営しているこだわりのレストランである。

和美夫人が私のホームページを見て頂いたことがきっかけとなり、山田新一著「素顔の佐伯祐三」をご紹介頂いたり、画集を贈って頂いたりですっかりお世話になっている。そこで一度はお店に行ってお会いし御礼を述べることが出来たらとかねてからの念願であった。

地下鉄日比谷線の終点中目黒駅で降りて、暗くなった街路を地図を頼りに5分も歩いたろうか、ワインレッドの看板に誘われ細い路地を入ると写真どおりの洒落たお店があった。
    右から山田安里氏、和美夫人、それに私達夫婦
    背後の絵は山田新一画伯の作品である。
胸をときめかせながらドアを開けて入るなり、和美夫人が出迎えてくれてびっくり。
昨日念の為送っておいたEメールを見て待ってくれていたのである。
何か旧知の間柄のような気分で今までの数々のご好意に心からのお礼を述べる。
奥まったテーブルに案内されると、その壁面にはお母さん(山田新一画伯夫人キミさん)の描いた静物画が架けられていた。お母さんも美術学校出身であったという。
店内はイタリア・トスカーナ地方の農家をイメージしたというだけに木造りの素朴な感じで気取ったところがない。すでに若い女性客が来ていたがこの街の雰囲気に調和しているのであろう。

しばらくしてオーナーである安里氏が現われさらに大感激。
店舗や住宅の設計が本職の安里氏はあまり店に顔を出さないとのことであったが、私たちの為に出て来てくれたらしい。それもお父さん(山田画伯)の油絵を持ってきて背後の壁に架けてくれる気の遣いように、嬉しさのあまり我にも無く舞い上がってしまった。
せっかくのイタリア料理を味わうゆとりも無く、何を聞こうか何を話そうかと気は焦るのだが思うように出てこない。思わす口にした唐辛子の辛さに飛び上がる慌てぶりに我ながら一体どうしたことだろうと呆れる始末.......。
それにしても安里氏は私の年令とあまり変わらぬ筈なのに随分若々しい雰囲気である。

ようやく落着き、山田新一画伯の業績、佐伯祐三との親交、残された手紙や葉書類、米子未亡人の話など、自らワイングラスを持ってきてお相手をして頂きながら色々とお話を伺うことが出来た。
山田画伯の絵をバックに写真を撮らせて頂くなどして(上の写真)、1時間半の予定時間はアッという間に過ぎてしまった。
出された料理はとても予約した値段ではあいそうにない豪華さで次々と運ばれてくる。中でも牛頬肉のワイン煮込みは圧巻であったがゆっくり味わえなかったのが心残りであった。
夫妻の心尽くしに感謝しながら『トスカーナの農家』を後にしたが、揃って店外までお見送り頂くなど望外の感激であった。
もう少し時間の余裕があったらとの後悔と嬉しい余韻に浸りながら、再訪を期しつつ新幹線の中で今日の出会いを書きとめる。

(空 想)
日記を書いていて気がついたのだが、その日の朝訪れた目黒の「都立庭園美術館」(旧朝香宮邸)のアール・デコ調の室内装飾や家具を設計したフランス人アンリ・ラパン(1873〜没年不詳 朝香宮邸竣工時60才 1925年パリで開催されたアール・デコ博で名声を博した画家・装飾美術家)の最盛期と山田新一画伯が最初にパリを訪れた期間(1928〜1930)とが符合しており、ひょっとすると長男安里氏命名に関係があるのかも知れないと、ふと思ったりしたものである。
山田安里とアンリ・ラパン.....偶然の一致かも知れないが妙に気になる出会いであった。

(※ 誠に残念ながらこの素敵なお店は平成16年4月都合により閉店となりました。)

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