|
110 近江八幡スケッチ・トリップ
令和元年8月26日
思い立ったが吉日、西可児駅5時44分発の始発電車に乗る。
かねての懸案、可児市展出展作品のためのモチーフ探しで候補地近江八幡(八幡堀)行きを実行した。猛暑もようやく一服したか、老体にも耐えうると判断し天気も晴れの予報なので昨日決めたばかりである。
週明けのせいか始発電車は意外に混んでいて名古屋に着く頃にはほぼ満員状態、現役の頃を思い出すが違うのは雑誌や新聞を広げる人は皆無で夢中でスマホをいじる人ばかり。JRのコンコースは残り僅かとなった夏休みを楽しむ若者たちの姿が目立つ。
近江八幡までの往復距離が216kmとジパング利用の条件(200km以上)を満たして3割引の特典に与かった。
久しぶりに乗る新幹線は何だか懐かしくホームで買ったサンドウィッチを頬ばるなど束の間の旅行気分である。米原からは在来線(東海道本線)に乗り換えたが、名古屋から1時間も経たないうちに近江八幡駅に降り立つ。まだ街は目覚めの雰囲気が漂う早朝7時50分であった。
陽射しはまだまだ強いが朝の空気が気持ちよく八幡堀まで歩くことにした。
1kmはないと踏んでいたのに意外にきつく出鼻に脚力の衰えを知らされる。
堀端に到着するや気を取り直してさっそくサイト・ハンティング………程なく絶好の風景が目に飛び込んできた。 夏の緑を背景に土蔵造りの白壁が静かな水面に映り込み、その岸辺に小さな遊覧船が数隻係留されている。さらに少し逆光気味なのが景色全体を引き立たせていた。
遠く晩夏を告げる蝉の声が届くも辺りはまだ朝の静寂が保たれている。 旅本などで紹介されている白雲橋界隈からは少し離れているのも幸いし人影もまばらだ。足元には座り込める石段があり願ってもない絶好のスケッチ・ポイントに恵まれたものである。
幸運に感謝しながら約2時間スケッチ・ブックを広げて熱中、観光客のざわめきを運ぶ遊覧船が姿を見せる頃には彩色を終えた。 油絵に描き直すための細部の写真を撮ってその場を離れる。
堀沿いの遊歩道を少し歩き白雲橋を渡って観光客で賑う日牟礼八幡宮に参拝、遊歩道にはスケッチを楽しむ二人連れの年配男性が居てここにも同好の士……と何か心強く嬉しい気分だ。
“超早起き”で出掛けてきた甲斐があったと満足感に浸りつつ、そろそろお昼時と食べ物屋さんを捜す至福のひと時である。
遊覧船の乗船場の近くで見つけた牛丼の店で生ビールを飲みながら今日の収穫(スケッチ・ブック)を広げる。覗き込む人が居てひとしきり話が弾むことにでもなれば最高でスケッチ旅の醍醐味なのだが今日は生憎であった。
店を出て近くを散策し再度スケッチ・ポイントに戻って出展作品の構想を練るなどゆったりとした時間を過ごして近江八幡駅に向かった。蛇足ながら疲れた足取りに一服する喫茶店をと捜したが一軒もない。“街角に喫茶店”は東海地方の特異現象と思い知りつつ足を運ぶ。
かくして“吉日”の目的は十分に果たし次はイーゼルに向かう日々を迎えるのである。
(写真は現場スケッチ、その後2週間ほどかけて描いた作品(油彩20号)は【一枚の絵】に掲載しておりますのでご笑覧ください。)
(了)
|
|
|
|
|
|
|