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108  根尾 昂 第八章  2回目の「ナマネオ」観戦記
令和元年6月21日


朝8時、ゴミ出しついでに理髪店に寄り店主と世間話に興じているうちに、次第にその気になってきた2回目の「ナマネオ観戦」。1回目は1月の合同自主トレ(ナゴヤ球場)だから凡そ半年ぶりである。
天候は薄曇りで雨の心配は無さそうだが一応折畳み傘をリュックにいれ、座席に敷く小ぶりの座布団も詰め込んでカメラを腰に……と、らしき出で立ちを整えて、買っておいた前売り入場券を手に名古屋へ向かった。
前売り入場券と云っても自由席で一定期間の間にナゴヤ球場で行われるウェスタン・リーグのどの公式戦にも使えるという“しろもの”である。(1枚800円)

10時50分ナゴヤ球場に着くと既に200人ほどのファンが行列を作っている。さらに続々と詰めかけていて根尾人気はいまだ健在のようだ。11時50分開門予定と聞いて1時間の立ちんぼうを覚悟した。
今日の対戦相手は広島、3連戦の緒戦(第15回戦)で12時半試合開始予定である。
広島と云えば根尾のライバル小園がいるが、昨日(6/20)一軍に昇格しいきなり1番ショートで先発、その初打席で左前に流し打ちの初ヒットを放つなどの活躍を見せた。そのため小園との対面・対決はお預けとなり一足先んじられた根尾の悔しさが思いやられる。

ようやく開門を迎える頃には500人を裕に超えるファンで折り返す長蛇の列。入場して座ったのは三塁側内野席の前から11列目、本拠地チームのベンチは一塁側でその様子が覗けるメリットがある筈だったが、中日のベンチは三塁側という誤算。でも左打席の根尾を見るには三塁側でなくてはならないし、ショートの守備もよく見えるのは三塁側と思い直す。スタンドの定員は5,000人と聞くが見渡すところ平日にも拘わらず半分ぐらいは埋まっている。
間もなく発表されたオーダーの3番には始めて座る根尾の名があり歓声があがった。そしてもう一人、先発投手はあの松坂(39歳)でダブル・スター見参とあって場内は一層の盛り上がりを見せた。
試合開始時パラついた雨も止んで青空が広がり、少し強めの風が吹き抜け暑さを凌ぐ絶好の野球日和となる。初めて見る二軍の公式戦、試合の進行は一軍の試合と殆ど変わらないが審判の数が3人と少なく、また周囲はマンションが立ち並び鳴り物が禁止されているのか打球音や選手の声がよく響きなかなかに新鮮な印象だ。

そして試合開始となり全てを忘れて根尾昂に集中、手元にはメモ帳と選手名鑑を用意している。特に二軍では知らない選手が多いのでページをめくる頻度が高い。中には二軍調整中の主力選手もいたり、根尾のように一挙手一投足に注目が集まる恵まれた選手もいれば、何年もの二軍暮らしで来年の契約が覚束ないような選手もいて狭いベンチには何かしら哀感が漂う。野球に限らずプロの世界は厳しい。

以下はメモ帳に記した根尾の今日の戦績である。

第1打席  1回  一死2塁、1-2から外角速球に振り遅れて空振り三振
第2打席  4回  先頭打者、1-1から芯でとらえたが風に戻され中飛……(写真)
第3打席  6回  二死2塁、1-1から中堅左に痛烈なライナー 好捕され中飛
第4打席  9回  一死1塁、1-2から中堅前に抜ける安打でチャンスを広げる

4打数1安打であったが第2打席以降はジャストミートで調子が上がってきている実感がある。本人も手応えを感じている雰囲気であった。
守備の方は2回に二遊間の強いゴロをはじいてピンチを招き松坂に謝り慰められる。8回にはボテボテのゴロで間に合わぬ一塁へ悪送球(記録はヒット)。守備機会は8回あったがやや安定感に欠け、ショートに打球が飛ぶとスタンドがざわつく程。
6月に入って打率は2割5分と上昇傾向で大分プロの水に馴染んできているが、相変わらず三振が多くエラーも目につく。やはり一軍への昇格はまだ見えていないと云うのが正直な実感であった。
中日一軍の成績は交流戦も負け越しBクラスに沈んでいる。夏場を迎えてカンフル剤が必要だが根尾にその役割はまだ荷が重いか。小園や藤原、吉田ら同期生も気になるだろうが、今はじっくり鍛錬を積むことだ。

試合の方は松坂投手が制球に苦しみ球速も今一つで、6回を投げ被安打7、失点2と二軍を相手に苦労していた。結局中日は3−0で完封負け、一軍経験のないケムナ投手(一昨年ドラフト3位の2年目)に完封を許す。試合終了後ベンチに戻った選手たちに監督やコーチから檄が飛んでいる様子であった。 もともと中日ファンでも何でもない自分に勝敗への関心は薄く、ただ根尾の活躍をたっぷりと見られたことで目的は十二分に達成された。
3時間ほどの観戦ですっかり日焼けした腕をさすりながら満員電車の客となる。

【翌日(22日)のスポーツ紙から】
●初のクリーンアップ(3番)を知った時、根尾は「先発メンバー表のいつもの場所(7〜9番)に自分の名がないので今日はベンチ・スタートかと思った。初めての3番起用に驚いた。」
●今日のバッティングについて根尾は「今はしっかりスィングが出来ている。」
●小笠原監督「この数試合で兆しが見えた。」
●森野コーチ「打つポイントが体の前に出るようになった。遠征に出る前(1週間前)とは全然違う。」
などと評価の声が上がっているものの一軍昇格については全く触れられていない。

また一軍の交流戦遠征で来名中の日本ハム栗山監督も根尾の状況を気にしていて、高卒新人の起用方法の難しさを指摘しつつ記者の質問に答え「少なくともプロ一年目でデビューの早さを競うものではない。根尾が一軍に定着し主力として同世代のライバルたちと対戦する日が来れば、二軍で力をためた新人時代をきっと懐かしむことになる。」と述べ焦ってはいけないと諭している。
栗山監督は昨年のドラフト会議で根尾を1位指名したが4球団競合で敗れ、外れ1位で夏の甲子園準優勝投手吉田輝星投手を獲得した経緯がある。吉田投手は先日(6/12)一軍で初先発初勝利を記録して順調な滑り出し、明日(6/23)の交流戦最終戦(中日)先発が予告されている。
広島の小園は昨日(6/21)も1番ショートで先発起用されたが5打数ノーヒット、9回には逆転負けのきっかけとなるエラーを犯す。ダルビッシュや大谷、中田、清宮を育てた栗山監督でさえ難しいという新人の起用、今日広島の緒方監督はどうするか注目したが、この試合も1番ショートで先発起用、期待に応えてマルチ・ヒットの活躍、守備では2失策。
また23日(日)に二度目の先発マウンドに立った吉田投手は3回5失点で初黒星、プロの洗礼を浴びる。

(了)