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105  根尾昂・第六章 『運命の日・ドラフト会議』
平成30年10月25日



【運命の日】
ついに運命の日が来た。
プロ野球ドラフト会議(NPL新人選手選択会議)が都内のホテルで開催された。
この日を目指して泥と汗にまみれ鍛錬してきた若者たちの将来が決められる。そのドラマチックな舞台に全国の野球ファンは勿論多くの国民が関心を寄せる年に一度の『国民的行事』である。
特に今年は豊年満作で将来性豊かな高校生が目白押し、また即戦力と期待される大学・社会人にも逸材が多い。とりわけ一昨年(平成28年)の秋からその存在を知り活躍ぶりを追い続けてきた『飛騨の怪物・根尾 昂』が超高校級の評価を受け天命を待つという、見逃すことの出来ない特別のドラフトなのである。
また、根尾自身にとってはこれまで全て自らの意志を貫き歩んできた路を初めて他人の意向に委ねる場面に立つことになるのだ。

午後5時、12球団の代表や監督が居並ぶ中で指名が始まった。
直前の予想では、最も高い評価の根尾に6〜7球団が集中すると見られていたが、いきなり藤原恭太(大阪桐蔭・外野手)が楽天、阪神、ロッテと3連続指名を受ける。中日が根尾を指名したが続くオリックスとDeNAが小園海斗(報徳学園・内野手)を指名する予想外の展開となる。
重複を嫌い確率を重視する選択に切り替えたようで、その後根尾に日ハム、巨人、ヤクルト、小園にソフトバンクと広島の指名が続いて夫々4球団(確率1/4)、藤原に3球団と高校生“ビッグ3”に11球団が集中、唯一西武が即戦力No1松本航(日体大・投手)を単独指名する結果となった。

【運命の当りくじは与田監督(中日)の右手に】
そしていよいよ運命の抽選に入る。
まず藤原を指名した3球団から。甲子園の阪神に行ったら面白いのにと思ったが、残念ながらロッテを率いる井口監督が引当てて満面の笑顔。
次にいよいよ根尾である。
再任が決まった巨人・原監督と新任の与田監督(中日)、ヤクルトの小川監督、それに昨年清宮を引き当てた強運の木田GM補佐(日ハム)が緊張した面持ちで並ぶ。そして交渉権確定の印が押された運命のくじは与田監督の右手に・・・・・。派手にガッツポーズを決めた与田監督が最初に引いた当たりくじは下から2番目と明かした。
“原・リスタート”に花を・・・との切なる巨人ファンの願いは敢え無く消えたが、“少なくともセ・リーグへ”の希望は叶えられ“ナマネオ”の機会も増える“ナゴヤ・ドームの根尾”も悪くないと自分でもあきれる程心が弾んでいる。
大阪桐蔭高校に設けられた会見席に座った根尾・藤原両選手と西谷監督に安堵の表情が浮かんだ。
故郷飛騨市に設営されたパブリック・ビューイングでは集まった町民らの大歓声が響く。雪深い飛騨地方にも熱烈な中日ファンが結構多いのである。(写真)
4球団の指名を受けた小園は広島の緒方監督が引き当てて1巡目が終わった。

小休止の後1順目で交渉権を得られなかった8球団の2順目の指名が始まる。
巨人など4球団が辰巳涼介(立命大・外野手)を指名したが楽天が引き当て、ヤクルト、DeNAが指名した上茶谷大河(東洋大・投手)はDeNAに、鉄腕ぶりで甲子園を沸かせた吉田輝星(金足農業・投手)は日本ハム、太田椋(天理・内野手)はオリックスが単独指名で交渉権を獲得した。
巨人はあくまで原監督に幸運を託したが1勝7敗の実績は裏切らず今回も連敗、3順目でようやく高橋優貴(八戸学院大・投手)を指名するなどして1位指名が終了した。高校生が5人、大学生が6人、社会人が1人で、ポジション別にみると投手6人、内野手3人、外野手3人であった。
根尾の中日、藤原のロッテ、小園の広島と大物を射止めてご満悦の3球団は、早くから1位指名を決め周囲の雑音を一切気にせずブレなかった点で共通している。“天命”はその辺りに注目して采配を振ったらしい。当初吉田に傾いていた巨人の方針変更に所詮勝ち目は無かったのかも知れない。
かくして飛騨の怪物、高校球界のスーパー・スター根尾昂のプロの道は定まり本拠地は名古屋と決まった。

【チームの勝利に貢献する超一流の選手に】
小学生の時の中日ジュニア以来再び中日のユニホームを着ることになった根尾の表情は明るい。
記者会見に臨んだ根尾は次のように述べている。
『ホッとしている。ドラゴンズは小さい頃から馴染みがあり縁を感じている。守りから勝ちを呼び込む粘り強い野球がドラゴンズの持ち味で、目指すのはどこを守ってもチームの勝利に貢献する超一流の選手になること。“二刀流”には拘らないが球団とよく相談して決めていきたい。セールス・ポイントは強肩でショートをやりたい気もする。憧れはイチロー選手で一人だけレベルが違う。プロ野球でもメジャーでも特別な存在。そういう存在になれたらいいと思う。』 と、どこまでも意識は高いが中日のショートには昨年新人王に輝いた京田がいる。 『今は到底及ばないが行く行くは追いつかないといけない』と謙虚に自分を見つめる目を忘れない。
大阪桐蔭の会見場には心配そうにドラフトの行方を見守る両親(写真―根尾浩さん52才と実喜子さん51才)の姿があった。自らの強い意志で歩み出した息子の姿を頼もしく目で追いながらも、厳しいプロの道を案じているに違いない。そんな親心が我が胸に滲みるのも同郷人であるが故か。

翌日さっそく大阪桐蔭校へ挨拶に訪れた与田監督に根尾は『ドラゴンズを優勝させられるように、自分の力でチームを底上げしていけるようになるのが自分の使命だと思っている。力をつけ勝利に貢献したい。』と責任感すら漂わせる決意を語り締めくくったという。高校生とは思えぬ態度と対応に与田監督は『何かビリビリ感じる素晴らしい選手だと改めて思った。先を見据えた澄んだ目をしていると思っていたが、会ってみてより感じた。』と初対面の感想を述べている。

【地域密着、他に二人の岐阜県出身選手(高校生)も中日へ】
中日の地域密着方針が生んだ二人の岐阜県出身選手を記憶しておかねばならない。
一人は飛騨高山市出身で中学生のとき『飛騨高山ボーイズ』に所属し根尾とともにボールを追ったサウスポー垣越建伸(山梨学園)で、甲子園に2度出場しマウンドに立っている。長身から投げ下ろす速球に将来性を買われてドラフト候補に上げられ中日が5位で指名した。『昂(根尾)と同じプロの舞台に立つことができ、しかも同じチームで本当に嬉しい』と喜びを隠さない。
もう一人は3位指名の勝野昌慶(三菱重工名古屋21才)。可児市出身で小学校2年から硬式の東濃リトルに入り西可児中では『中濃ボーイズ』に所属、土岐商を卒業後社会人野球で活躍。アジア大会に日本代表として参加するなど実績を評価されての指名であった。西可児中学校は我が家の子供たちが通った学校で近在に勝野という姓が多く親しみを感じる。
同期入団の3人が中日の主力選手として活躍する夢のような日が実現するかも知れない。

【ともに戦った仲間達は・・・・・】
大阪桐蔭で3年間ともに戦ってきた仲間たちは根尾、藤原の他に柿木、横川の二投手が『プロ志望届』を提出していて結果はエース柿木蓮には日本ハムが5位指名。左腕横川は巨人が4位で指名した。
同一校から4人の指名は2001年の日大三高以来で史上最多タイ。
仲間たちについて根尾は『意識の高い選手と3年間野球が出来たことは自分の人生にとって大切な財産、これからの人生にとっても大事な3年間になる。これからも仲間を大切にしレベルアップ出来るようにしていきたい。』と熱く語っている。 彼らの戦いぶりや野球に取り組む姿勢をつぶさに見て来ているが、彼らの絆の強さは尋常ではない。
二死無走者であと一球の崖っぷちから繋いで繋いで繋いで繋いで逆転した北大阪府大会準決勝(履正社戦)を想い起すだけで十分である。大学や社会人野球に進む者を含め、彼らの前途に幸あれと願うばかりである。
(※ 写真は中日スポーツ(10/26)より)



(了)