ベスト8進出をかけての三回戦最後の試合に大阪桐蔭が登場、相手は仙台育英で甲子園球場は42,000人の大観衆で埋まる。
スコア・ボードに表示されたオーダーは今日も主軸は2年生でその中央(4番)に根尾の名前があった。
投手は2年生の柿木、今日最もいい状態なので起用したとは監督の話。相手はエース長谷川で中一日置いての登板である。
4時45分試合開始、両投手の伸びのあるストレートと切れのある変化球は強力打線に連打を許さず7回までゼロ行進、そして迎えた8回にようやく試合が動いた。
大阪桐蔭に山本、中川の長短打が出て待望の先取点が入る。その裏仙台育英も反撃したが左翼山本の好返球でホーム寸前タッチアウト、流れは完全に大阪桐蔭に傾く。
そして最終回、仙台育英の攻撃も二死無走者、最後まで崩れぬ柿木の力投に誰しも大阪桐蔭の勝利を疑わなかった・・・が、その直後信じがたいドラマが待っていた。
勝ち急いだか下位打線に安打・盗塁・四球で二死一、二塁のチャンスを許す。
しかし次打者を遊ゴロに打ち取りゲーム・セットと思われた次の瞬間、縦にあがる筈の塁審の手が水平に伸びている。送球を受けた一塁手中川がベースを踏み外し、踏み直す一瞬の間に打者走者の手がベースに届いたのである。(右写真)
何が起きたのか、マウンドに駆け寄ろうとしたナインは呆然と立ち尽くす。
二死満塁・・・・・心の整理がつかないまま次打者に対したのか、センターオーバーの逆転打を喫して勝利の歓喜は一気に暗転しサヨナラ負けとなってしまった。
一瞬の油断が勝敗を反転させるあまりに苛酷な現実に選手たちの涙が止まらない。
『勝負は下駄を履くまでは何が起きるかわからぬ。最後まで諦めてはならない』という教訓を証明する試合として甲子園の球史に刻まれることになるであろう。
どう受け入れていいのか、呆然と仙台育英の校歌を聞く選手たち・・・・・
遠くスコア・ボードを見つめる鋭い眼差しの根尾に涙は無かった。
4番に座りながら得点に絡めず苦戦の原因となった不甲斐なさを噛みしめているようにも映る。(写真中央)
放心状態の中川や柿木の姿を目で追いながら西谷監督は
『今日の負けは誰のせいでもない。今年のチームは主将を中心にまとまりがあり、2年生が3年生を尊敬するチーム。こういう代で勝ってこそ財産になると思っていた。勝たせてやりたかった。』と巨体を持て余しながら『大阪桐蔭の夏』を締めくくった。
大阪桐蔭 | 000 000 010 = 1 |
仙台育英 | 000 000 002 = 2 |
【根尾の全打席】
@ 初回二死一塁 中飛
A 4回無死二塁 二塁ゴロ(チーム・バッティングで進塁打)
B 6回二死無走者
中前打
C 8回二死無走者 二塁ゴロ
(4打数1安打 打点0) 7回から三塁へ回るが守備機会なし
史上初2度目の春夏連覇の夢は破れ“根尾 昂の2年生の夏”も不完全燃焼のまま終焉を迎えた。夏の甲子園3試合全イニング出場で12打数4安打、打率 .333、3打点 投手として登板する機会はなかった。
半年ぶりに見た根尾は確かに逞しさは増しているものの、強豪チームの主力打者としての風格や存在感にまだまだ足りないものを感じる。たとえ下級生であっても主力打者として果敢に難敵に立ち向かい先頭に立って苦境を打開する姿にチームメイトは信頼を寄せ奮い立つものである。
注目されるミレニアム世代(2000年生まれ、2年生)は田中(東海大菅生)浜田(明豊)谷口(神戸国際大付)林(智弁和歌山)中沢(青森山田)野村(花咲徳栄)ら多士済々、来年の100回記念大会の華になるに違いなく大阪桐蔭四人組にも更なる鍛錬・精進を期待したい。
甲子園は準々決勝、準決勝、決勝とフィナーレを迎えるが、『根尾 昂・第二章』は来春の第三章、来夏の第四章と続くことを念じつつ一旦頁を閉じることにする。
(了)