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99  飛騨の怪物『根尾 昂』
平成29年3月28日



先日の東京に次いで岐阜、名古屋に桜の開花宣言が発せられようやく春本番、春といえばセンバツ高校野球、甲子園球場もベスト8の花が咲き大詰めを迎えている。
注目を集めていた早稲田実業の清宮幸太郎も2回戦で姿を消し興味半減かと思われたが、生粋の“飛騨っ子”にとって望外の吉報が飛び込む。
一昨日(26日)の朝日新聞岐阜板に大阪桐蔭の新2年生根尾 昂(あきら)が紹介され「飛騨の怪物、甲子園登場」と大きな活字が躍っていた。

根尾・・・と聞いて何やら覚えがある。
それもその筈、記憶の先に一昨年の夏、県岐商など名だたる強豪校を破り母校斐太高校を夢の甲子園へあと一歩のところまで導いてくれた準優勝投手根尾 学君を思い出した。勝ち進む度に炎天下の長良川球場に応援に駆け付けその活躍を脳裏に刻みつけたあの選手である。(「日記こもれび」保存版No93)
その後同窓会か何かの飲み会で「彼には弟が居て大物らしい」との噂を聞いたことがあり、もしやと思い記事を辿るとやはりそうであった。あの夏、兄が奮闘する長良川球場のスタンドで声を涸らしていたに違いなく兄が果たせなかった甲子園の夢を見事に果たしたのである。
写真は初戦の宇部鴻城戦で一回ライト前に2点適時打を放つ根尾 昂(朝日新聞から、 記事の要旨は次の通り)

【根尾 昂】のプロフィール
大阪桐蔭新2年生 177センチ、76キロ 右投げ左打ち、投手、内・外野手
飛騨市河合町出身、両親は医者(三つ年上で斐太高のエースであった兄は医科大学に進み医者を目指す。)
●河合小2年の時、兄の影響を受け軟式野球を始め古川中で硬式の飛騨高山ボーイズ(高山市)に所属、投げては146キロ、打つ方もホームランを連発する怪童振りでボーイズ選抜の日本代表に選ばれて米国に遠征。
●野球ばかりでなく、スキーでは全国大会アルペン競技(回転)で優勝、陸上競技でも百メートルでジュニア五輪に出場したという。頭脳も抜群で3年生の時、通知表はオール5、生徒会長を務めるなど憧れの的であった由。
●高校進学を迎え野球の道を進むことを決意、数校の強豪校から声がかかったが、全国のトップレベルの野球がしたく練習中の切り替えを徹底する姿勢に共感して大阪桐蔭を選んだという。監督はあの巨腹を揺らす名将西谷浩一である。そして1年生からレギュラーとなりセンバツ出場となったのだが、同学年には文字通りキラ星の如き逸材が揃う。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

以下は第89回選抜高校野球大会における大阪桐蔭の戦績と根尾 昂の活躍の記録である。
1回戦(宇部鴻城)3月25日
宇部鴻城 000 000 000 = 0
大阪桐蔭 510 220 01X = 11
先発メンバー中 1番藤原(中)、2番宮崎(左)、3番中川(一)、5番根尾(遊) 6番山田(三)が2年生で5人が打線の主軸を占めている。試合は11−0で圧勝したが、根尾は初回のチャンスにタイムリーを打ち勢いをつける活躍、山田もツー・ランを放つなど翌日の新聞は「黄金世代、上々のデビュー」と謳った。
試合後、「特に緊張は無かった。結果が出てよかった。」と淡々と語る。

2回戦(静岡)3月27日
大阪桐蔭600 000 032 = 11
静   岡610 000 100 = 8
根尾は5番ショートで先発。7回を終わって6−8と劣勢であったが、終盤8回反撃の口火となるヒットで出塁、逆転したその回からリリーフのマウンドに立った根尾が2回を零封、勝利の立役者となった。試合後のインタビューで西谷監督は「気持ちの強い子、締めるのは根尾と決めていた。」と信頼も篤い。隣のインタビュー台には決勝点をたたき出した選手と一緒に根尾の姿があった。 翌朝のTBSスポーツ・ニュースでは、出身地はアニメ映画「君の名は」の舞台飛騨市と紹介し「清宮に代わる怪物」と持ち上げていた。

準々決勝(東海大福岡)3月29日
東海大福岡000 000 020 = 2
大阪 桐蔭000 010 21X = 4
好投手の投げ合いで接戦となる。相手投手は右アンダースローで根尾は3番センターで先発したが手許でホップする球にてこずる。8回4打席目でレフト前にテキサスヒットで出塁、投手としての出番は なく今日は鳴かず飛ばず・・・・・だが守備では俊足、強肩が目を引く。
この試合は2年生の活躍に影の薄かった3年生が奮起、エース徳山と4番山本らが活躍して準決勝へ進出。

準決勝(秀岳館)3月30日
大阪桐蔭000 001 010 = 2
秀 岳 館000 000 010 = 1
息詰まる投手戦、連投の徳山が奮投し辛勝。根尾は相手が左投手とあって7番ショートで先発するも4打数ノーヒットに終わる。守備では一塁への悪送球でピンチを招いたが、軽快なフットワークとグラブ捌きは解説者を唸らせる程で身体能力の高さを示した。5番に座った2年生の山田が2本のタイムリーを放つ活躍でいよいよ決勝の舞台へ。
相手は報徳学園(兵庫)を6−4で降した履正社で、大阪のチーム同士の初の対決となった。履正社にはプロ注目のスラッガー安田が3番に座り今日の試合でもホームランを打つなど調子を上げてきている。大阪桐蔭投手陣がどう抑えるかが勝負の鍵、リリーフに立つ左腕根尾の真価が問われる場面も或いは実現するかも知れない。

決勝(履正社)4月1日
大阪桐蔭110 001 005 = 8
履 正 社000 000 030 = 3
雨で一日伸びた決勝戦は藤原(2年生)の先頭打者ホームランで始まる。ペースを掴んだ大阪桐蔭がさらに藤原の2本目を含む2本のソロで点差を広げ迎えた8回裏、さすがに疲れが出たエース徳山が安田ら主軸に掴まりあっという間に3−3の同点となって振出しに戻ってしまう。
この試合の根尾は接戦必至と見た西谷監督の采配でベンチを温めていたが、終盤8回表代打に起用されそのままセンターの守備に就いていた。
追いつかれた9回表、徳山に代わる代打背番号18番をつけた西島が嫌なムードを振り払う2ランを放って勝ち越すと堰を切ったように連打が始まる。一死3塁の場面で二度目の打席に立った根尾はレフトのポ−ル際にあわやホームランかというタイムリーを放ってダメ押しの6点目をたたき出し、さらに俊足を飛ばして盗塁を決め7点目のホームを踏む。
そして筋書き通り締めくくりのマウンドに立った。
(写真は気持ちの強さを感じさせるマウンド上での 気迫溢れる表情)
制球が定まらず四球を連発したが手許で伸びる速球にものを云わせて最後は併殺に打ち取ってゲームセット。5年ぶり2度目の優勝の歓喜の輪の中に・・・・・。
『5点差あったのでどんどん突っ込もうと思った。まだまだ出来ないことが多いことが分かった。このまま夏に向かっても意味がない。』とは試合後の彼自身のコメントで、(中日新聞)その意気や良し。

今日も藤原や根尾ら“黄金世代”(2年生)の活躍が目立ったが、勝利の美酒に浸っている閑はない。明日から厳しいレギュラー争いが待っているし大阪府内には履正社を始め強豪校がひしめいている。夏に向けて さらに腕を磨き抜群の身体能力を発揮して再び全国の高校野球ファンを魅了して欲しいものである。
言わずもがな、生粋の飛騨っ子としてもプロを目指す“飛騨の怪物”の行く末を追いかけなくてはなるまい。

【今大会での根尾 昂の成績】
(打撃成績) 19打数4安打、打点4、打率 .211 盗塁1
(投手成績) 2試合、3回、打者数9、被安打1、与四球3、失点0

(了)