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07  松井秀喜「男の美学」

平成14年10月11日(金)

プロ野球もいよいよ大詰め...といっても既に両リーグとも早々と優勝が決まり、残るは個人成績に関心が寄せられる程度の秋風が身に沁みる日程消化シリーズである。

が、昨夜の東京ドームは沸いた。
ジャイアンツの本拠地最終ゲームで試合終了後祝勝セレモニーが行われるとあって超満員。その熱気に応えるように、オレンジの旗が振られるスタンドへ松井が2本の豪快なアーチをかけて、ついにホームラン50本の大台に乗せた。

今シーズンは三冠王を広言して憚らず有言実行、ホームラン(50)と打点(107)は文句なし、残る打率も中日の福留と凌ぎを削る厘毛差の争いの中で最後の最後までフルスイングの自分の打撃スタイルを堅持。セーフティバントまで絡めて先行する福留をアーチで追撃する松井の「美学」に男のロマンを感じ、本物のスラッガーの姿を見る思いだ。
あと広島戦一試合を残すのみで、試合に出ない福留に対し4安打以上の固め打ちが必要だが、不可能と知ってもフルスイングに徹する姿勢は変えないだろう。
三冠王を逃してもあくまで松井流のバットマンレースを闘い抜く姿は男らしく清々しい。十二分に三冠王を超える価値があると言っていい。

野球ファンの心を捉えてやまない松井のバッティングの魅力は、ひたむきな練習で培われた空気を切り裂くようなバットのヘッドスピードであり、頬を膨らませ歯を食いしばって内角速球を振り抜くあの真剣勝負の姿であろう。特大のホームランを打っても当然のように淡々とダイヤモンドを一蹴する勇姿も、チャンスに三振して天を仰ぎ悄然とベンチに戻る背番号55もまた我等の四番打者松井である。
年に2回程ナゴヤドームの巨人戦を観戦するが、その試合では必ずと言っていいほど目の前でホームランを打ち日頃の鬱憤を晴らしてくれる有難い存在だ。

昨夜のゲームの終盤8回、ヤクルトの五十嵐投手の150キロの剛速球を左中間席へライナーで弾き返したあのパワーも、ひょっとすると来シーズンは海を渡ってしまうのかも知れない。
この頃のスポーツ紙は盛んに米大リーグの”巨人”ヤンキースへの移籍を書きたてているが、自分の力が本場でどこまで通用するのか試してみたいという気持も「男の美学」として理解できない訳ではない。大リーグでいきなり首位打者やMVPに輝いたイチローとは全く違うタイプのパワーヒッターが、ボンズやソーサ等大リーグの強打者を向こうに回し引けをとらない活躍をする姿を見てみたい気もする。
勿論本人は無言、打撃3部門の通算記録も連続出場記録も途絶えてしまうし、第一、不動の四番打者が抜けた巨人打線は一体どうなるのか、巨人フアンとしても松井フアンとしても誠に気の揉める複雑な思いなのだが.....。

1シーズン50本以上の”アーチスト”はプロ野球史上8人目となる大記録である。因みにその顔ぶれは小鶴(松竹)、野村(南海)、王(巨人)、落合(ロッテ)、バース(阪神)、ローズ(近鉄)、カブレラ(西武)である。

【追記@】 
翌日の最終戦(広島)は5打数ノーヒット3三振で打率3割3分4厘、福留との差は8厘と開いて三冠王は絶望となったが、この試合も全打席フルスイングを貫いて、全試合全イニング4番打者として出場した今シーズンの公式日程を終了した。(写真は11日広島最終戦第2打席三振で三冠王絶望の瞬間 朝日新聞から)

【追記A】
日本シリーズを四連勝で飾った翌日FA宣言をし大リーグ挑戦を表明した松井選手は、12月19日米大リーグの名門ニューヨーク・ヤンキースに入団することを正式に決めた。
ニューヨークの新聞によれば3年契約の総額25億2千万円で、背番号は55番を希望し5番左翼手でデビューすることになりそうとトップ記事で報じている。大リーグのホームページは打率2割9分ホームラン35本を予測しているが、日本の4番打者として恥かしくない成績を収めて欲しいものである。
松井選手なら必ず期待に応えてくれるだろう。

(了)