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59  「名古屋タイムズ」休刊!

平成20年11月1日


名古屋を愛し名古屋に愛された夕刊紙「名古屋タイムズ」が10月31日を最後に休刊となってしまった。

1946年(昭和21年)5月21日、戦後間もない荒廃の中で産声をあげてより実に62年間市民に親しまれてきた大衆紙の終焉で何か気の抜けたような淋しい気持ちにかられている。
“名タイ”の名で親しまれてきたこの夕刊紙はまさに名古屋の復興・発展とともに歩んできた。店頭売りで会社帰りのサラリーマンなどに絶大な人気があったが、夕刊紙を取り巻く経営環境の悪化に抗しきれず遂に休刊に追い込まれたものと聞く。
「ニューヨーク・タイムズやロンドン・タイムズがあるなら名古屋タイムズがあってもいいじゃないか」と創刊にこぎ着けた気概は遠い昔のこと、大都市名古屋も夕刊紙ひとつ養うことが出来なくなったのかといささか情けない気がする。

私と「名古屋タイムズ」との出会いは昭和33年新入行員として東海銀行矢場町支店に配属された時で、当時の社屋は矢場町支店の近くにあり、取引関係から短期間であるが購読した記憶がある。

「名古屋タイムズ」は文字通り名古屋に関する情報をベースに面白おかしく世相を切る“ゴッタ煮の大衆娯楽紙”である。終電間際の疲れた頭を癒すには恰好のお相手で現役時代には随分と付き合ってもらった。
エログロものの頁も秘かな楽しみであったが、人目を憚る刺激的な写真や挿絵が踊っていて周囲を気にしながら読んだものである。 買ったら必ず見るのが麻雀や囲碁の「次の一手」で時間を忘れて熱中したが、答えと点数が別の頁に載っているので自分の力を確かめる面白さがあった。
また地元紙だけに戦後間もない頃の写真のストックが豊富で時折特集された“街の今昔物語”は史料としても貴重である。大衆娯楽紙とはいえ時に読み応えのあるインテリジェンスも十分に備えていた。
大リーグなど海外の情報をいち早く掲載して“スポーツ紙の夕刊版”としての機能も発揮していた。

リタイアした後の私は専ら毎週土曜日の愛読者になった。
4頁目に掲載されている「刑事コロンボの超推理」と称する“しり取りナンクロ”がお目当てで、なかなか歯ごたえがある漢字熟語のクロスワードである。買いだめしておいて名古屋へ出る折の電車やバスの中で熱中するという次第だが、名古屋へ着くまでの約一時間で解いてしまおうと鉛筆を舐めなめ挑戦するのである。ボケ防止を兼ねての楽しみなお遊びであった。

派手な見出しで賑々しく店頭を飾っていた「名古屋タイムズ」が休刊になるとは予想だにしなかった。
月も改まった今朝、日経の社会面の片隅に「名古屋タイムズ62年の歴史に幕」との小さな見出しが目に止まりびっくり、ならばせめて記念すべき最後の夕刊を手にせんものと近くのコンビニに走った。幸い売れ残りの一部を買うことが出来た。
「平成20年10月31日付第20834号」(写真)が最後の夕刊であり大切に保存しておこうと思っているが、 嬉しいことに金曜日にも拘らずお別れ記念の“しり取りナンクロ”が掲載されていた。
そして「2000年1月にスタートした当クイズですが、あなたの漢字力アップに役立ちましたか。8年9ヶ月のご愛顧ありがとうございました。」と付記されていた。いつの日にか復刊することを祈りながらじっくりと解くことにしたい。

(了)