辛うじて進出した決勝トーナメントで逆転されての連敗、その不甲斐ない戦いぶりに国民の落胆は大きかった。最強軍団で金メダル濃厚と期待を抱かせていながらこの体たらくと首脳陣への批判は厳しい。野球と同様に今回限りで正式種目から外される女子ソフトボール・チームが激闘の末米国を破って宿願の金メダルを獲得した直後だけになおさらであった。
などなど、毒舌の野村(楽天監督)からは「仲良しグループがちょこっと練習したぐらいで勝てると思っていたのか、投手出身の監督は視野が狭い。」と酷評され、挙句の果てには「一流ホテルの個室を用意する特別待遇までして貰っていたのに・・・・・」などと選手団長に揶揄される始末。骨身を削った星野監督には誠に気の毒だが「勝てば官軍、負ければ賊軍」である。帰国後は一切弁解せずにひたすらお詫びを繰り返す姿は、地に落ちたとはいえ「男・星野」に相応しく少しは救われる気分になるのだが。
あえて私見を言わせて貰えばこの「男・星野」への自己陶酔こそが敗因の全てに関る原因ではなかったか。
中日ドラゴンズ時代の熱血監督、負け犬タイガースを甦らせた成功神話が長嶋、王に続いて日の丸を背負う球界のエースに押し上げ北京五輪を目指すことになった。
“星野が行くところ勝利の美酒あり・・・・・”彼我ともにこれを認める状況になって過信が嵩じ我が身にカリスマを帯びると自認してしまったのではないか。自分が作った軍団(自分ガ声をかけた選手)は自分の意に応えて動き自ずと道は開ける・・・・・と。そのカリスマが敵を知る努力と事前準備を怠り選手選定と起用法に齟齬をきたした時、それを補うだけの力はこうした軍団には備わっていない。また彼を支えるべき球界の協力姿勢にも本気モードが欠けていて、韓国のような挙国体制とは程遠い現実があったことも付け加えなければならない。
夫々の球団に戻った選手達はファンから温かく迎えられ、息を吹き返したように終盤に入ったペナントレースを戦っているが、一方には新井(阪神)や川崎(ソフトバンク)のように故障を悪化させて今シーズンを棒に振ろうとしている選手もいる。
冷静に体調を見極めることなくその気力だけを頼りに起用した結果である。
彼らにとって北京オリンピックとは一体何であったのだろうか。
来年2月には第2回WBCが行なわれる。ディフェンディング・チャンピオンとして如何なる体制で臨むのか、銅メダルさえ取れなかった星野に続投の目は薄く、王は体調に問題を抱えるとなると残る大物は“愚痴の野村”か“変わり者の落合”か・・・・・。
「実力は韓国の方が上」とこぼす選手達に“日の丸の誇り”が戻るだろうか。
(了)