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41  初雪の旧徳山村

平成18年12月6日


昨日(12月5日)の絵画教室で「徳山ダム」が話題になった。

やはりこの夏に徳山ダムに足を運んだという教室の先生が「今朝の中日新聞に水に沈む徳山小学校の写真が出ている。」と告げてくれた。
どうなっているだろうかと気になっていたので さっそく買い求めたが、一面に四段抜きの大きな写真が掲載されていて見出しは『徳山に”名残雪”』、まさに水没が始まろうとしている徳山小学校の見慣れた校舎が写っていた。(写真ー中日新聞より)

3日から本格的な雪模様になったこの地方は積雪10センチを記録し一面の雪化粧で山水画を見る趣きである。
9月25日に開始された湛水が着実に進んで既に中心地徳山地区が水没、住民のたっての希望で残された高台の徳山小学校もその足元までひたひたと水が迫っている。
最深部の水深は50メートル近くに達している筈だ。
草茫々の校庭や校門は水面下に消え、流れ寄せられてきた雑木や浮かんだ枯れ草に雪が積もり中州のようになっていかにも寒々とした風景である。その真ん中に背の高い一本の木が観念したように立ち尽くしている。

白い3階建ての校舎はよく見ると、窓という窓に張り巡らされていた板がすっかり取り払われ、絡まっていた蔓草も綺麗に取り除かれているようだ。正面玄関も、裏側の増築部分も元の状態に戻されている。
せめて最後は出来る限り元の姿でとの旧村民の気持ちなのか。あるいは水資源開発機構のせめてもの罪滅ぼしのつもりであろうか。
すっかり清められた“墓標”は冷たい水面に影を落としやがて湖底に沈む運命を従容と受け止めているかのようである。
近くにあるはずの火の見櫓の影も見えず、また徳山村を舞台にした映画「ふるさと」を記念して建立された大きな石碑も既に湖底に沈んでいる筈だ。

同好の旅からこの夏二度訪れることになった徳山ダム、村ごと沈む山村を象徴する徳山小学校の校舎に惹き寄せられるようにして、今その姿を油絵に描き上げたところだ。 出来栄えはともかくとして、子供達の歓声に包まれた昔日を偲ぶことが出来るなら旧村民の方々に見てもらいたい気もするのである。(右写真)


(了)