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37  思い立って「飛鳥」に飛ぶ

平成18年5月25日


“思い立ったが吉日”と好天に恵まれた木曜日、奈良県明日香村へ出掛けた。
先日何気なく聞いていた「ラジオ深夜便」でキトラ古墳の壁画「白虎」の現物が公開されているという耳寄りな話を聞き、一度も行ったことがない「飛鳥」を訪ねようと思った。公開期間が短く今週末で終わってしまうとのことで、手帳と天気予報を睨みながら急遽本日決行となったものである。
朝6時に家を出て、ジパング・クラブの割引券で奈良県JR桜井駅までの切符を買った。

京都、奈良を経て10時を少し回った頃桜井駅に降り立つ。 周りに一目でそれとわかる中年の人達が居たが案外閑散としていた。
「白虎」が公開されている「飛鳥資料館」へのアクセスはバスである。運悪くこの時間帯は便 がなく約2時間待ち、かなわぬとタクシーに乗った。全国から見物客がワンサとやってきていると聞いていたが・・・と運転手に水を向けると曰く「JRより近鉄飛鳥駅の方が余程便利だ」。勉強不足であった。
「桜井市は林業が盛んだが最近は廃業が目立ち製材所の跡地はスーパーやコンビニに変わっている」と地域経済の現況をひとくさり。

程なく目的地に着いたが平日というのにやはり大変な人出だ。
聞けば「白虎」を見るのに75分待ちとのこと、これは想像以上とびっくりしたがまずは並ぶ以外に手はないとチケットを買い万博を思い出しながら長い列の後尾につく。
資料館の中の行列なので展示物などを眺めながら進むこと40分・・・・・それほど退屈するでもなく意外に早く現物を拝観する時が巡ってきた。監視員が目の前に立ちガラスケースに収められた「白虎」は思ったより小さく(縦横約50センチ)薄く剥ぎ取られた全身の図で、特に頭部から肩、前足の部分が精細に描かれていて朱色の彩色も鮮やかに残っていた。(上写真)
これが1300年も前のものかと思えるほどに艶やかで漆喰の表面が印象的である。 同時に保存事業の難しさと払われている努力の大きさを如実に語りかけているのを感じた。
じっくりみたい欲望を抑え後の人に譲るアッという間の”ご面会”であったが、何といっても現物を見ることができた感慨がそれなりの満足感を味わせてくれる。
資料館では今回の企画に合わせて飛鳥時代の各地の古寺跡から出土した壁画片など、中国や朝鮮に深く影響を受けた飛鳥時代を物語る様々な展示が行なわれており、発掘時話題を呼んだ山田寺(飛鳥)の遺構(回廊)も復元展示されていて目を引いた。
高松塚古墳、キトラ古墳と相次いだ世紀の大発掘も、その後壁画の劣化が急速に進んでいるという。この貴重な国家的遺産を何とか現状のまま保存して貰いたいものである。

飛鳥資料館を出てちょうど出発しようとしたバスに乗り、成り行き任せでふと降り立ったのが「万葉文化館」。
まだ完成して間もない県立の美術館で飛鳥を題材にした日本画展が開かれていた。館内からは広い飛鳥の山野を望むことができしばし悠久の飛鳥を偲ぶ。
万葉文化館の前にある「酒船亭」で昼食を摂ったが古代米を炊いた一口ばかりのご飯が添えられていた。腹ごなしに近くの「飛鳥座神社」や古い町並み、飛鳥時代の水道施設「水落遺跡」、「酒船石」などを散策、途中軽くスケッチを楽しむなど一人旅の気安さを存分に楽しむ。
住民たちと立ち話をしながらのんびりと歩いている人達や自転車を利用した見物客が至る所で見られ、まさに“今が旬”の飛鳥であった。

折角だから高松塚古墳や石舞台などもっといろいろな場所を廻りたかったが、夜の予定があって時間も無くバスで桜井駅に戻り今度は途中乗換えの近鉄特急で帰る。
急に思い立っての慌しさで「国のまほろば飛鳥」をほんの少しかじってみたにすぎず、 この次には車を利用し存分に廻ってみたいと楽しみを先に繋いだそんな日帰りの旅であった。
後日に備え資料や案内書をしっかりと集めての帰宅は言うまでもない。

(了)