奥飛騨温泉郷・新平湯温泉の一角に名を「こんじ」と呼ぶ旅館がある。

昭和54年頃からお世話になっているという阿波の名刹「建治寺(こんじじ)※」の住職から名を受けたという曰くつきで、客室7部屋、定員32名のこじんまりした湯の宿である。(※ 建治寺は四国八十八ヶ所13番(大日寺)の奥の院で「建治の滝」で名高い修行の霊場)

夫婦で切り盛りするごく家庭的な旅館で、女将の荒井淳子さんが何といっても大黒柱だ。 初めて訪れたのが平成8年だからかれこれ10年近くになるが、以来親しく迎えてくれる女将の笑顔に、すっかりとりこになってしまった感じである。
勿論そればかりではない。
溢れる温泉と四季折々の「飛騨の旬」を楽しめる自慢の料理が決め手である。 雄大な自然を眺めながら「湯浴み酒」を酌む露天風呂がお気に入りで、それこそ身体の芯から温まる。 そして湯上りの「山菜膳」が待つ。

蕗、蕨、山椒、くごみ、棗など折々の山菜をはじめ天然の川魚や茸、地鶏、飛騨牛など飛騨の大自然が育む豊かな食材を活かした料理が並ぶ。とりわけ建治旅館の自慢の一品は食前の「自家製またたび酒」と熊笹で巻いて蒸し揚げた「笹巻き」で四季を問わず膳に上る。
酒は「神代」「氷室」など数種類の地酒が用意されている。
カラオケを楽しみたい仁には女将が近くの親戚がやっているスナックへ案内してくれるという寸法だ。
そして朝餉の「朴葉みそ」がまた秀逸・・・・・。

北アルプスの麓、奥飛騨温泉郷のほぼ中心にあり高山や松本の観光地にも通じる好位置で、友と興じるも好し、一人傷心?を癒すも良し・・・私にとっては里帰りの気分、ゆっくりと静かに寛げる”一押しの宿”であり、まさに「湯情の宿」である。

余談ながらもう一つ気に入っているのは「旅館」という言葉の持つ暖かな響だ。奥飛騨温泉郷には何と180軒もの温泉宿があるが「旅館」と称している宿はたった6軒、”旅装を解く旅人の気分”でそれだけで何か心が安らぐではないか。

湯情の宿 建治旅館


高山市奥飛騨温泉郷 新平湯温泉
TEL 0578-9-3433 FAX 0578-9-3435
http://www.d1.dion.ne.jp/~konji>