朴葉みそ

「朴葉みそ」は「赤かぶ」と並ぶ飛騨地方の伝統的なナショナル・ブランドである。

名古屋や大阪・東京などでも飛騨や高山の看板を掲げている店では必ずといっていいほどメニューにその名がある。
炭火を入れた小振りのこん炉に網デッキを載せその上に大きな朴葉に盛った味噌を置いて焼きながら食べるのである。
味噌は昔は自家製の豆味噌でそれぞれの家の味であった。味噌だけでもいいが、ネギを細かく切って載せ、砂糖や油で少し味付けするのが定番であり「基本形」だ。
この頃はネギの他に椎茸などの茸類、高原野菜類、魚介類に飛騨牛など賑やかに載せられている。(写真)
飛騨の冬は長く寒さが厳しい。煮付けは勿論のこと、漬物であれ佃煮であれ何でも囲炉裏で暖めて食べる風習がある。その最も象徴的なものが「朴葉みそ」というわけだ。

使われている朴葉はその名の通り”朴の木”(モクレン科の落葉高木)の葉であるが、大きいもので長さ30センチ幅20センチぐらい。香りがよいうえに殺菌作用があり、器具や資材の乏しかった昔は食べ物を包んだり乗せたりするのに格好の包装材でありお皿であった。
青葉の時には搗きたての餅を包んでカビを防ぐ「朴葉餅」にしたり、香りを活かして「朴葉ずし」にする。

秋には落ち葉を集め乾燥させて保管しておき色々な囲炉裏焼の敷きものとして重宝した。朴葉みそのときは朴葉を少し湿らせて使い、朴葉が焼ける香ばしい風味が味噌やネギの焦げる味と調和して食欲をそそる。
あつあつのご飯に載せて食べたり酒の肴にも誠に絶妙である。

蛇足ながら最後に味噌の味が沁みつき焦げ付いた朴葉をかじるのが秘かな楽しみで、ほろ苦さも加わって実にうまい。
遠い昔手伝いに出た野良仕事の昼飯は割り子に詰めたご飯に焚き木で焼く朴葉みそであった。 まさに自然の恵みそのものである。